公的な産学共同研究補助制度の申請時の留意点を教えてください。
A一口に「公的な産学共同研究補助制度」と言っても、様々なタイプの事業が存在しますが、ここでは、一般的なものについてみてみます。
毎年定期的に公募を行う省庁は、主だったところでも企業に関係の深い経済産業省をはじめ、大学等学術機関サイドでは文部科学省、或いは厚生労働省や総務省などがあり、またこれら省庁が所管する外郭機関・団体などでも公募案件を示しているところが少なくありません。加えて各地に存在する財団法人なども、その事業趣旨に沿った公募を行っているケースも見られます。
公募案件自体もその研究期間が、単年度で研究成果を求めるものや複数年度の研究を認めているもの、また補助される金額も数億から数十億円を必要とする、いわゆるビッグプロジェクトに対応したものから比較的小規模な共同研究に対するものまで様々な案件が存在しています。また、1案件あたりの補助金額の上限が示されているものや補助率の設定がされているものなどもあります。求められる研究内容やその成果も、目的に合わせて多岐にわたっています。過去、公募があった案件で、例えば、通信・放送機構(TAO)は新たな技術の開発・確立に視点がおかれ、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では、その市場性に力点がおかれていたなど、アウトプットとしての研究成果には、切り口・スタンスの違いも見られました。公募案件の目的や趣旨を十分把握したうえで、申請作業に望みたいものです。
一般的に、多くの共同研究補助制度事業の公募申請期間は比較的短く、短期間に申請書を作成し、提出する必要があります。このため、実際に採用された場合の研究実務担当を想定し、これに基づくプロジェクト・チームを編成したうえで、役割分担を決め一気にとりまとめると良いでしょう。自社のスタッフはむろんのこと、連携先である大学の教官や研究機関の研究員、場合によっては外部専門家などを動員した体制づくりが重要です。申請書に記載する内容は専門技術的な要素ばかりでなく、研究内容の社会的意義や波及効果などをはじめ、多方面にわたる言及を求めている場合もあり、プロジェクト遂行に関わる客観かつ豊富なノウハウ・知見が必要です。また、公募締め切り後、書類選考のみならず、実際に申請者を呼んで、口頭説明(プレゼンテーション)及び質疑応答を求められるケースもあります。
産学連携に意欲的で、具体的研究成果を実現化したい企業にとっては、公的な産学共同研究補助制度へチャレンジすることは、その結果としての採用、不採用に関わらず、今後の企業成長への有形無形の貴重な財産となることでしょう。昨今では、全国各地で大学等の研究成果の産業界への技術移転を円滑に行うための機関として「TLO」が、また大学内にも産学共同研究の実践窓口として、「産学共同研究センター」が次々に設置されてきており、その受け皿体制の充実ぶりには目を見張るものがあります。企業にとって最も重要なことは、これら機関・組織、また大学教官との信頼関係を構築すべく、常日頃からの人的なネットワークづくりに努力を惜しまず、積極的な情報収集を行ってください。また、自社の強みである技術やサービス内容について、大学教官や研究機関研究員に開示しておく必要があります。
関連URL
TLO総合支援ホームページ http://www.kankeiren.or.jp/tlo/index.html
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